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概要

移民法は 企業が外国人労働者を不当に低賃金で雇用することを禁止しています。特にH-1Bビザをサポートする企業に対しては、LCA (Labor Condition Application/ETA-9035)の提出を義務づけることにより、企業が外国人労働者を不当に低賃金で雇用しないよう厳しく監視しています。 そして違反者に対しては厳しいペナルティーを科しています。

雇用者はE-ビザやL-ビザに比べて、H-1Bビザはリスクの高いビザであることを認識することが大切です。


なぜH-1Bビザはリスクが高いのか?@ -  妥当な給料支払誓約条項

H-1Bビザをサポートした場合にリスクが高くなるのは、雇用者が妥当な給料(Prevailing Wage)の支払いを移民局に対し誓約することが義務付けられているためです(E-ビザやL-ビザにはこのような誓約はありません)。

そして、雇用者がこの給料額の支払いを怠れば、以下のようなペナルティーの対象となります:

移民法上の罰金 (最高一人あたり$11,000)
移民法上の刑事責任 (6ヶ月の禁固刑)
未払い給料の支払い命令 (すべての未払いH-1B労働者に対して)
将来におけるH-1Bビザサポート資格の剥奪
労働法上の罰金 (州の労働法による)
労働法上の刑事責任 (州の刑法による)
 

H-1Bビザの申請は複雑であるため、多くの企業が弁護士を雇ってビザ申請を行っていると思います。そして、弁護士が作成した書類に対し、指示されるままにサインをして提出しているケースがほとんどです。

しかし、H-1Bビザを申請した場合は、例外なく「妥当 な給料」の支払いに関する書類(LCA)にサインをしています。そしてLCAにサインをした時点で違反者は上記ペナルティーの対象となります。

なお、移民法上の罰金ならびに未払い給料に対する支払い命令は、対象となるすべてのH-1Bビザ労働者に対して行なわれます。つまり、例えば10人のH-1B労働者に対して給料の未払いがあれば、10人すべてに対しての未払い給料支払い命令が発行されます。また、罰金も「一人当たり」ですので、最高で$110,000($11,000 * 10人)の罰金が科せられる可能性があります。

さらにH-1Bビザ労働者に対する給料の未払いは、税法上の源泉徴収義務に違反していることが多く、この場合には 後日IRS(源泉徴収部門)の調査をが入る可能性が高くなります。そしてこの調査で所得税・会社税の問題が発覚し、さらに会社税部門の調査を受ける場合もあります。加えて、州の労働局の調査を受ける場合もあります。


なぜH-1Bビザはリスクが高いのか?A - 元H-1Bビザ労働者による告発

雇用者がH-1Bビザに関する法律違反でトラブルとなるケースのほとんどは元H-1Bビザ労働者からの告発によるものです。

違法労働の場合、元労働者が雇用者を告発することは稀です。なぜなら、移民局の調査が入り雇用者が摘発された場合、告発をした違法労働者自身も将来のビザ発給拒否等の不利益を蒙るためです。 つまり、違法労働のケースでは雇用者も労働者も罰せられるのです。

しかし、H-1Bビザの規定違反の場合、告発者(H-1B労働者)が移民局から不利益を受けることはありません。 罰せられるのは雇用者だけです。これは給料の未払いに関しては労働者には責任がないためです。むしろ、移民局も労働局も、このような告発を受理する専用の窓口を設けて積極的に 違反者の情報を収集しています。

H-1Bビザ労働者に決められた給料を支払わない場合、その労働者が雇用者を告発しない最大の理由は、「雇用者が告発されれば、現在のH-1Bビザを失い、アメリカにいられなくなるかもしれない」ということを恐れているためです。 しかし、このような労働者を給料を支払わないまま解雇してしまうと後日告発される可能性が高くなりますので注意が必要です。


禁止されている行為

H-1Bビザに関する禁止行為のうち特に問題になるのは次の行為です:

LCAに記載した給与を支払わない
H-1Bビザの規定と抵触している雇用契約を結ぶ
LCA上はパートタイムと記載したのに、実際にはフルタイムで就労させる
LCAに記載したのと異なった場所で勤務させる

LCAに記載した給料額は必ず支払わなくてはなりません。LCAに記載された給与金額は、州が設定した最低賃金と同じ効力を持ちます 。別の雇用契約書を結びこの金額を減額することはできません。

企業によってはH-1Bビザを申請した弁護士とは別に、雇用法の弁護士を雇いH-1Bビザ労働者との雇用契約書を作成するところもあるようです。この場合 、雇用契約書上、 最低でもLCAに記載した給料を支払いを保証shなくてはなりません。LCA上の金額より少ない給料を記載した雇用契約書やコミッションやボーナスの額によってLCA上の給料を下回る可能性のある契約書は無効であるばかりでなく、悪意ある移民法違反の証拠となり得ますので、このような契約書を作成することは非常に危険です。

LCAの給料を抑えるために、書類上「パートタイム」としてH-1Bビザの申請をしておきながら、実際にはフルタイムで働かせる雇用者がいますが、これは明らかな移民法違反です。特に、LCAには「パートタイム」と記載しておきながら、別の雇用契約書で「フルタイム」での就労を義務付けるた場合、そのような契約書は無効であるばかりでなく、悪意ある移民法違反の証拠となり得ますので注意してください。

また、LCAに記載した勤務地と異なる勤務地で就労させることも移民法違反となりペナルティーの対象となります。予定していた勤務地と異なる場所に勤務させる必要が生じた場合、H-1Bビザの修正申請が必要になります。


雇用者 へのアドバイス

H-1Bビザ申請の際LCAに記載された給料の額は、雇用者が政府(移民局ならびに労働局)に対しその支払いを確約した金額ですので、この給料は必ず支払わなくてはなりません。この規定は非常に厳しく、仮に仕事が 無いことを理由にH-1B労働者を自宅待機させている場合でもこの給料を支払わなくてはなりません。

以上のような理由から、H-1B労働者を雇用する場合には以下の点に注意してください:

LCAに虚偽の記載をしないこと。LCAへの虚偽記載は偽証罪の対象となります。
  LCAに記載した給料を支払うこと。最低でも月1回は支払いを行なうこと。
LCAの内容と異なる雇用契約書を作成しないこと。LCAの給料金額より安い金額で雇用する旨の契約書を作成することは、故意に移民法を犯してい るという証拠を作成していることに他なりません。
雇用契約書にコミッションやボーナスに関する条項を入れる場合は、仮にH-1Bビザ労働者が得ることのできるコミッションやボーナスが$0であった場合でも、LCA上の給与額が保証されているように契約書を作成すること。
H-1B労働者の勤務地を変更する場合には修正申請を行うこと。
H-1B労働者からLCA違反に関するクレームを受けた場合は誠意をもって対応すること。不誠実な対応が原因でこの労働者から告発されれば、極めて深刻な事態へと発展する可能性があります。

具体的なアドバイスをご希望の方はメールでご相談ください。


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